2回目は成長戦略についてまとめます。
初回はこちらをどうぞ
出展は学校法人産業能率大学が発行している『Strategy Essence』です。
通信研修リポートの内容を自分なりにまとめましたので,参考にしてみてください。
Contents
ドメインについて
・ドメインとは,企業が事業を展開する固有の生存領域を意味する。
・企業とステークホルダーのドメインに関する共通認識のことをドメイン・コンセンサスという
・鉄道会社がドメインを「鉄道事業」と定義するように,製品の機能特性に従ってドメインを定義する
ことを物理的定義という。
・エーベルは,顧客層・顧客機能・代替技術という3つの視点からドメインを定義することを提唱している。
ドメインの比較例
従来型の古書店とブックオフのドメインを比較すると,従来の古書店とブックオフはエーベルが提唱する3要素には一体感がある。両者の違いは事業の拡張性にある。
従来の古書店 | 特殊な顧客層の特殊なニーズに展開が難しい技術でサービスを提供している →事業の拡張が難しい |
ブックオフ | 拡張性が高く,多店舗化して事業を拡張できる |
結論 | 3要素の一体感と事業の拡張性が両立しているのが良いドメイン |
katapi’s memo ドメインを正しく設定したうえで,誰にどんなものを提供するかを決めるのが大事。 |
製品ライフサイクル(PLC)と戦略
一般に,製品は①導入期,②成長期,③成熟期,④衰退期という4段階の製品ライフサイクルをたどる。ここでは各段階で有効な戦略を紹介します。
①導入期
事業が始まり,製品が市場に投入されたばかりで,開発費用やプロモーションの費用に対して売上高が少ないので,利益が出ないことが多い。導入期は競合が少ないので,早く商品の認知度を上げることが有効。
②成長期
製品の認知度が上がり,売上高の増加に伴い利益も改善する。しかし,競合他社も市場に参入するため製品の改善やラインナップの追加,変更を行う。
③成熟期
市場が成熟して代替需要が多くなる。一部の競合他社は衰退するが,需要が伸び悩んでいることから価格競争は激しくなるので,市場や製品の見直し,販売促進活動の見直しが必要。
④衰退期
商品の魅力が薄れ,売り上げが減少する。競争者の撤退で残存者利益を得られることもあるが,全体としては利益が減少するため撤退が検討される。
製品・市場マトリクス
チャンドラー氏は19世紀後半から20世紀前半におけるアメリカの大企業を研修し,企業は以下の4段階を経て発展することを明らかにした。
量的拡大 | 販売量を増やし,損益分岐点を超える収入を目指す |
水平拡大 | 生産・販売拠点を拡充し,地域的に事業を拡大する |
垂直拡大 | 川上や川下の事業領域に進出する |
多角化 | 既存事業と異なる事業領域に進出する |
アンゾフの製品・市場マトリクス
アンゾフは製品・市場マトリクスといって企業の発展・成長の方向性を製品と市場という2つの視点で整理している。
説明 | リスク | ||
① | 市場浸透 | 既存市場で既存の製品を浸透させる戦略 | 低 |
② | 新製品開発 | 既存市場において新しい製品を投入する戦略 | 大 |
③ | 新市場開発 | 新しい市場に対して既存の製品を浸透させる戦略 | 大 |
④ | 多角化 | 新しい市場に新しい製品を投入する戦略 | 極大 |
katapi’s memo 開発部隊は②新製品開発,③新市場開発を積極的に推進したい |
製品ポートフォリオマネジメント(PPM)
PPMの発想は事業を単独で管理するのではなく,複数の事業の組み合わせ(ポートフォリオ)として考える。
PPMを作成する方法
上に示すような,製品ポートフォリオマネジメントの図を作成する方法を紹介します。
縦軸:市場成長率
横軸:相対市場シェア
円の大きさ:SBUの売り上げ高
SBU(Strategic Buisiness Unit)とは 独自の顧客・組織を持つ事業単位で,子会社,事業部,事業部内の製品群が該当する |
相対市場シェアについて
<自社が最大シェア20%,2番手が10%の場合>
20%÷10%=2.0
<自社がシェア8%,他社が最大シェア20%の場合>
8%÷20%=0.4
各セルの特徴と課題
①金のなる木
特徴 | 成長率は低いが,市場シェアが高い。企業の大黒柱となる本業。市場は成熟し,安定的に大きな売上高を確保できる。 |
課題 | 状態を維持し,生み出したキャッシュフローを次代の事業育成に活用する |
②花形
特徴 | 成長率・市場シェアが高く,次の大黒柱となる中核事業。売上高も増加傾向だが,拡張投資による負担も大きいため,キャッシュフローは低水準。 |
課題 | 市場での優位な地位の確立 |
③問題児
特徴 | 成長率は高いが,市場シェアが低い新規事業。投資による資金流出が多い割に市場シェアが低い。また生産コストも高いため,お金を生みにくい。 |
課題 | 商品の育成,社内体制の見直し,市場開拓などによって,市場シェアを高めること |
④負け犬
特徴 | 成長率・市場シェアがともに低い,衰退事業。 |
課題 | 縮小でキャッシュフロー確保するか,場合によっては撤退する |
katapi’s memo 新規事業は『問題児』からスタートすることが多いが,やがて『花形』⇒『金のなる木』へと成長させなければならない。その後,負け犬になる前にそこで得た資金を新たな『問題児』への投資や『花形』への拡張投資にあてるのが理想。 |
垂直統合戦略
垂直統合戦略とは,サプライ・チェーンの上流や下流に事業範囲を広げることをいう。
垂直統合には,後進的(川上)統合と前進的(川下)統合がある。
後進的(川上)統合:販売業者が生産や原材料調達へと進む
前進的(川下)統合:生産者側が販売・流通に進出する
技術革新や需要構造の変化が激しい時代には,経営資源を保有することよりも,活用することに重点をおくべきである。
従来,サプライチェーン間の取引では,市場取引か垂直統合かという二者択一が主流だったが,リスク軽減のためにその中間として戦略的提携(アライアンス)を活用する企業が増えている。
多角化戦略
多角化とは,企業が発展・成長するために,本業以外の製品分野や市場進出することで,事業を多様化させることをいう。
①垂直型多角化
既存事業と最終顧客は同じだが,川上・川下の方向に進出する多角化
②水平型多角化
既存事業が対象とする市場と同じタイプの市場に新製品で進出する多角化
③集中型多角化
既存の製品,市場の両方を関連付けて,様々な製品を様々な市場へ参加させる多角化
④コングロマリット型多角化
既存の製品・市場と全く関係のない領域に進出する多角化
katapi’s memo 多角化のタイミングは,本業が成長してある程度の経営資源が蓄積されたが,まだ成熟期に入ってない時期に新規事業を始めるべき。 |
グローバル化戦略
現在,国内市場が縮小してきたため,グローバルな事業展開が課題となる。
特に近年アジアの新興国が世界の成長セクターになっており,新興国の事業展開が企業の成長性を左右するようになってきている。
海外への事業展開は国内展開よりもリスクが大きいため以下のステップで進めるといい。
STEP1 | 本国でやってきたビジネススタイルをそのまま持ち込む |
STEP2 | 本国のビジネススタイルを,現地のスタイルに合わせて修正して持ち込む |
STEP3 | 基本的に現地のスタイルで事業展開する |
STEP4 | 世界標準化と現地適合化の良いところを組み合わせる |
STEP5 | 現地適合化をイノベーションと呼ばれる状態にまで高め,それを世界に向けて横展開する |
katapi’s memo グローバル化では現地の特徴をつかむことが第一に必要。次に世界標準化と現地適合の使い分けを明確にすることで現場の混乱を防ぎ,かつ経営や意思決定のスピードを高めることで激しく変化する市場で成功することができる。 |
次回は新規事業開発についてまとめます。
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